疾患辞典

中枢神経系原発悪性リンパ腫

中枢神経系原発悪性リンパ腫

中枢神経系原発悪性リンパ腫は、血液細胞の一種であるリンパ球が、脳や脊髄、眼球といった中枢神経系の中でがん化してしまう病気で、悪性脳腫瘍に含まれます。
一般的な体のリンパ腫(血液のがん)が脳に転移したものではなく、最初から脳(または眼)に発生したがんです。 神経膠腫などの他の脳腫瘍とは異なり、脳の中に染み込むように広がるだけでなく、多発性(脳のあちこちに同時にできる)であることも多いです。

症状

腫瘍ができた場所に応じてさまざまな症状がでます。症状の進行が数週〜数ヶ月単位と比較的速いことが特徴です。

  • 麻痺や言語障害 片方の手足に力が入りにくい、しびれる、ろれつが回らない、言葉が出にくいなど、脳梗塞と似た症状
  • 精神症状・認知機能の低下 ボーっとする、物忘れがひどくなる、やる気が出ない、性格が変わったように見える、といった認知症のような症状
  • 頭痛・吐き気 腫瘍が大きくなり頭蓋骨の中の圧力(脳圧)が上がって起こる症状
  • 目の症状 目のかすみや視力低下が脳の症状に先立って現れることがあります。約10〜20%の患者さんで、腫瘍細胞が眼球に浸潤し「ぶどう膜炎」を起こすことがあります。
  • けいれん発作

検査と診断

脳の中でリンパ球ががん化する明確な原因はわかっていません。 多くは免疫機能が正常な中高年の方(とくに60代以降)に発症します。

検査と診断

診断において、他の脳腫瘍(とくに神経膠腫や転移性脳腫瘍)と見分けることが非常に重要です。

  • MRI検査 診断の入り口となる最も重要な検査です。造影剤を注射すると腫瘍が白く濃く染まる(増強効果)のが特徴で、多発していることも多いです。
  • 全身のCT検査・PET検査 体(脳以外)にリンパ腫がないかを全身スキャンし、原発性(最初から脳にできたもの)であることを確認します。
  • 眼科での検査 眼球内にリンパ腫がないかを詳しく調べます。
  • 脳脊髄液検査 腰から針を刺して脳脊髄液を採取し、その中に腫瘍細胞がないかを調べます。
  • 脳生検術 手術で腫瘍の一部を採取し顕微鏡で調べること(病理診断)で、悪性リンパ腫であることを確定します。

【注意点】 この病気が疑われる場合、ステロイド(デキサメタゾンなど)という薬を使うと一時的に腫瘍が劇的に小さくなり、症状が良くなることがあります。しかし、そうなると生検術を行っても腫瘍細胞が見つからず、正しい診断ができなくなってしまいます。 そのため、診断が確定するまでは可能な限りステロイドの使用を避ける必要があります。

治療

中枢神経系原発悪性リンパ腫の治療は、他の脳腫瘍とは大きく異なります。

  • 化学療法(抗がん剤) これが治療の主役です。 「メトトレキサート(MTX)」という抗がん剤を点滴で大量に投与する、「大量メトトレキサート療法」をベースにした多剤併用療法が標準治療です。脳には血液脳関門というバリアがあり、普通の抗がん剤は届きにくいため、このように大量投与する必要があります。 通常は数週間の入院を1サイクルとし、これを何度も繰り返します。その他、リツキシマブを併用することもあります。
  • 放射線治療 化学療法と組み合わせて脳全体に放射線を照射(全脳照射)します。化学療法と組み合わせることで高い治療効果が期待できますが、とくに高齢者の場合には、治療の数ヶ月〜数年後に記憶障害や認知機能の低下(白質脳症)といった後遺症が出ることがあり、適応は慎重に判断されます。
  • 手術 この腫瘍は、手術で取り除くことに治療効果は期待できないため、原則として摘出術は行いません。手術の役割はあくまで診断を確定するための生検術のみです。

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