正常圧水頭症
正常圧水頭症は、脳室に脳脊髄液が溜まることにより、脳室が拡大して脳が圧迫される病気です。この病気は、症状が出ていても、髄液圧がほぼ正常範囲に保たれているのが特徴です。
脳が内側から圧迫されることで、特徴的な3つの症状「歩行障害」「認知障害」「尿失禁」を引き起こします。
症状
特徴的な症状である「歩行障害」「認知障害」「尿失禁」のうち、「歩行障害」から始まるのが一般的です。また、この3つの症状がそろわないことも多いです。
- 歩行障害 最も多く、最初に出やすい症状です。
・ 小刻み歩行 歩幅が狭くなる
・ すり足 足が上がりにくい
・ 開脚歩行 足を開き気味に、不安定に歩く
・ 磁石歩行 足の裏が床に貼り付いたように、第一歩が出にくい
・ 転びやすくなる
- 認知障害(認知症) 「アルツハイマー型認知症」の物忘れとは少し様子が異なります。
・ ぼーっとしている時間が増える(自発性の低下)
・ 物忘れが目立つ
・ 反応が鈍くなる、無関心になる
- 尿失禁 3つの症状の中では、最も遅れて出ることが多いです。
・ トイレが近くなる(頻尿)
・ 間に合わず尿を漏らしてしまう
これらの症状は数ヶ月~数年かけてゆっくりと悪化するため、加齢のせいだと見過ごされていることが非常に多いです。
原因
- 特発性(とくはつせい) くも膜下出血などの明らかな原因がなく、加齢とともに脳脊髄液の吸収が悪くなることが原因と考えられていますが、はっきりとしたメカニズムはまだわかっていません。特発性の場合が多いです。
- 続発性(ぞくはつせい) くも膜下出血、頭部外傷、髄膜炎など、過去にかかった病気が原因となり、脳脊髄液の吸収が悪くなって発症します。
検査と診断
- 頭部CT / MRI検査 最初に画像検査を行います。「脳室が異常に拡大していないか」、「脳の表面(特に頭頂部)の溝が狭くなっていないか」など、正常圧水頭症に特徴的な脳の形になっていないかを調べます。
- タップテスト 本当に脳脊髄液が原因で症状が出ているのかを調べます。腰から注射針を刺し、脳脊髄液を30mlほど抜きます。もしも症状の原因が正常圧水頭症ならば、水が抜けることで一時的に脳の圧迫がなくなり、翌日~数日後に歩き方が目に見えて改善します。このテストで明らかな改善が見られれば、後述の「シャント手術」で症状が改善する可能性が非常に高いと判断されます。
治療
外科的治療(手術)を行います。
- 外科的治療(シャント術) 脳に過剰に溜まった脳脊髄液を、別の場所(主におなか)に逃がすためのバイパス(迂回路)を作る手術です。
- V-Pシャント(脳室-腹腔シャント): 頭に小さな穴を開け、脳室に細いチューブを挿入し、皮膚の下を通ってそのチューブをおなか(腹腔)までつなぎ、余分な水を腹腔内に流す方法です。
- L-Pシャント(腰椎-腹腔シャント): 腰椎からチューブを挿入し、おなかまでつなぐ方法です。
どちらの手術も「圧可変式バルブ」という、流れる水の量を体の外から調節できる装置を組み込むため、術後に水の引きすぎや不足を調整することができます。