慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫は、比較的軽い頭部外傷をきっかけに、脳を包む硬膜と脳の表面との間に、数週間から数ヶ月かけてじわじわと血液が溜まり、血腫となって脳を圧迫する病気です。頭を打ってから数週間後に麻痺や認知症のような症状が現れます。
症状
受傷直後に症状は現れません。受傷後3週間~数か月が経った頃から、溜まった血腫が脳を圧迫しはじめ、次のような症状がゆっくりと現れて次第に悪化していきます。
- 頭痛 持続的で鈍い頭痛(激痛ではないことが多い)
認知症のような症状
- 物忘れがひどくなった
- ぼーっとすることが増えた、元気がない
- 性格が変わったように見える
- 片側の麻痺 片側の手足に力が入らない、動かしにくい
- 歩行障害 歩きにくい、足がもつれる、よろける
- 意識障害や排尿障害(重症化すると)
これらの症状が血腫によるものだと分からず、年齢のせいで認知症が進んだと思ってしまうケースが非常に多いです。
原因
- 数週間~数ヶ月前の軽い頭部外傷 「家の敷居で頭をぶつけた」「酔って転んだ」「ドアに頭をぶつけた」など、軽いけがであるため、本人が受傷したことを覚えていないことも少なくありません。
- 架橋静脈などの小さな血管の損傷 加齢などで脳が萎縮していると、脳と硬膜の間を橋渡しする静脈(架橋静脈)が引き延ばされ、軽い衝撃でも切れやすくなります。ここから少量の出血がじわじわと続き、血腫が徐々に大きくなります。
- リスクを高める要因
- 高齢 加齢による脳萎縮で頭蓋骨と脳のすき間が広がり、出血がたまりやすくなります。
- アルコール多飲 慢性的な飲酒は転倒を増やし、また血小板機能低下などで出血しやすくなるため、発症リスクを高めます。
- 抗凝固薬・抗血小板薬の内服 ワルファリン、DOAC、アスピリン、クロピドグレルなど「血をサラサラにする薬」を飲んでいると、軽い外傷でも出血が止まりにくく、血腫が形成されやすくなります。
検査と診断
- 頭部CT検査 急性の出血と異なり、時間の経った古い血腫が脳の表面に黒っぽく三日月型に写るのが特徴です。新しい血腫は白っぽく、古い血腫は黒っぽく(脳と同じ色に)映ります。血腫によって脳が反対側に圧迫されている様子もわかります。
治療
血腫の大きさや脳への圧迫の程度を確認し、麻痺・言語障害・歩行障害・意識障害・頭痛などの症状とあわせて、保存的治療(内服および経過観察)を行うか、外科的治療(手術)を行うかを判断します。
一般に、症状が明らかな場合や血腫が大きい場合には、手術が勧められます。一方、症状が軽度で血腫も小さい場合には、内服治療で経過観察を行うこともあります。
- 外科的治療:穿頭血腫ドレナージ術 もっとも一般的な治療法です。ほとんどの場合は局所麻酔で行われます。手術時間も30分前後のことが多く、高齢の方にも比較的負担が少ない手術です。頭蓋骨に1円玉ほどの穴を開けて硬膜を開き、血腫を吸引します。生理食塩水できれいに洗い流し、脳の圧迫をとり除きます。血腫があった空間にドレーン(細い管)を数日留置して排液します。手術後、数時間から数日で圧迫されていた脳が再び広がり、麻痺や認知症のような症状が改善するケースが多くみられます。
- 保存的治療 血腫の量が非常に少なく症状もごく軽い場合は、手術をせずに内服薬(漢方薬など)で血腫が自然に吸収されるのを待つこともあります。