疾患辞典

聴神経腫瘍

聴神経鞘腫

聴神経鞘腫は脳腫瘍の一種です。 脳から内耳へとつながる神経の鞘(さや)から発生する良性の腫瘍です。
この神経は、音を聞くための聴神経と、体のバランス(平衡感覚)をとるための前庭神経がセットになっています。※正確にはほとんどが前庭神経の鞘から発生するため、「前庭神経鞘腫」がより正しい。
良性のため成長はゆっくりですが、狭い骨のトンネル(内耳道)の中で大きくなるため、早期から神経を圧迫して症状が出ることがあります。しかし、「片側の耳鳴り・難聴」といったありふれた症状から始まるため、見過ごされやすい側面もあります。

症状

腫瘍が神経を圧迫することでゆっくりと症状が進行します。 片側だけに症状が出るのが特徴です。

  • 聴力の低下:最も多い初期症状
  •  ・片方の耳が聞こえにくい、耳が遠くなったと感じる

     ・高い音から聞こえにくくなることが多く、電話の音が聞き取りにくい

     ・突然聞こえなくなる(突発性難聴)

  • 耳鳴り:聴力低下と同じ側の耳で「キーン」や「ジー」といった耳鳴りが続く
  • めまい・ふらつき:バランスの神経(前庭神経)から発生するため、めまいも起こしやすい。ぐるぐる回るような激しいめまい(回転性めまい)よりも「体がふらつく」「よろける」「雲の上を歩いている感じ」といった症状(浮動性めまい)が多い。
  • 顔面の症状(腫瘍が大きくなった場合):腫瘍のすぐそばを顔面神経(顔を動かす神経)や三叉神経(顔の感覚の神経)が走っており、腫瘍が大きくなるとこれらの神経を圧迫して次のような症状が出る。
  •  ・顔のしびれ、感覚の鈍さ【三叉神経症状】

     ・顔の麻痺(顔がゆがむ、目を閉じにくい、口角が下がる)【顔面神経症状】

  • 重篤な症状(さらに腫瘍が大きくなった場合):腫瘍が脳幹(生命維持の中枢)や小脳(運動調節の中枢)を圧迫するようになると、歩行障害、意識障害、水頭症などを起こし、命に関わることもある。

原因

多くは偶然に発生するもの(孤発性)で、明確な原因はわかっていません。生活習慣などとの関連も明らかではありません。 ごくまれに、遺伝的な病気(多発性内分泌腫瘍症1型など)の一部として発生することがあります。

検査と診断

片側の聴力低下や耳鳴りで耳鼻科を受診して異常が見つかり、脳神経外科に紹介されて診断がつくケースが一般的です。

  • 聴力検査 片側の感音性難聴というタイプの難聴がないかを調べます。
  • MRI検査 造影剤を注射しながら撮影する造影MRI検査で、数ミリの非常に小さな腫瘍でも白くはっきりと映し出すことができます。診断確定のために最も重要な検査です。
  • CT検査 腫瘍によって周囲の骨(内耳道)が削れていないかなどを調べるために行うことがあります。

治療

腫瘍の大きさや症状(とくに聴力が残っているかどうか)、患者さんの年齢や全身の状態を総合的に考慮して以下の3つから最適な方法を選択します。良性で成長が遅いため、慌てて治療を決めないことも多いです。

  • 経過観察 「腫瘍が非常に小さい(直径1.5cm以下など)」「症状が全くないか非常に軽い」「高齢である」といった場合にはすぐに治療をせず、定期的に(半年〜1年に1回)MRI検査を行い、腫瘍が大きくなっていないか様子をみます。 成長が止まっていたり、非常にゆっくりであったりすれば、そのまま経過観察を続けます。
  • 外科的摘出術(手術) 「腫瘍が大きい」「症状が進行している」または「経過観察中に明らかに大きくなってきた」といった場合の標準的な治療法です。 全身麻酔のもとで顕微鏡(マイクロスコープ)を使い腫瘍を摘出します。手術の目標は、腫瘍を取り除きつつ、すぐそばにある顔面神経を温存する(麻痺させない)ことです。 聴力が残っている場合は聴神経の温存も目指しますが、難しい場合も多いです。 ※手術の安全性を高めるため、術中に神経の機能を監視する「神経モニタリング」を必ず行います。
  • 放射線治療 ガンマナイフやサイバーナイフといった定位放射線治療(ピンポイント照射)で、腫瘍に放射線を集中して照射します。 放射線治療の目的は、腫瘍を取り除くことではなく、これ以上大きくならないように抑えることです。治療後、数年かけて腫瘍が小さくなることもあります。 腫瘍が比較的小さい(直径3cm以下)場合や、患者さんが高齢で手術が難しい、あるいは手術を希望されない場合に良い適応となります。

電話でのお問い合わせ

代表 06-6568-1601

専用フォームでのお問合せ

お問い合せ
矢印TOP